02、真理と人格
03、光と力
04、僧道の復興
05、山頂に叫ぶ
06、魚の子は多けれど
07、泥の中の花
08、平和の道
09、せめてもの
10、ふと聞いた落語
11、目に見えない世界
12、樹下の戦い
13、宇宙を制する大音響
14、目に見えないもの
15、人間賛歌『願生の人』
16、唯我一人の悲願に生きる人々
17、組織の中に道心なし
18、末法の修行は人間礼拝
19、鷲峰会の目的とその使命
20、本仏の浄土は厳然としている
21、正法の宣布か寺門の興隆か
22、正法を見る者は仏陀を見る
23、神々をも指導する人々
24、菩薩道の実践なくして
25、成仏に対する絶対的条件
26、ほんものとうつしもの
27、一国一宇本化僧堂の建設
28、ここに道あり
29、実践者と代弁者
30、奇蹟に対する仏教徒の態度
31、平凡なる殉教者地にあふれるならば
32、過去は生きている
| 三十二、過去は生きている 「過去のすべてのものは悉く消え去ってしまって、もはや何ものもない」と思っている人が殆んである。確に存在するものは現在にしかない。現在の存在ーこの現実をぬきにして別に過去や未来という存在があるものではない。過去がそのままに現在となり、現在がそのまま未来となる。 げに「現在は過去の娘にして未来の母」悠久の過去も永遠の未来も悉く現在にある。一瞬すぎても過去一瞬さきは未来。過去・現在・未来の三時(三世)は一瞬の現在時点に同時に在在しており、この一瞬の存在が、過去の必然性と未来の可能性との接点になっている。 三時(三世)は各別ではなく一体のもの、これこそ現実である。花が散って実となる。花は過去、実は現在というのではない。蓮華のように花と実は同時に存在している。因果は同時であり不二である。花と実は共に生きている。過去も未来も共に現実に生きている。 蓋し現在は、過去の累積の結果だけではない。生きているのは、その結果だけではない。百万円の貯蓄も一円から始まる。一円をぬいても百万円はない。過去の一円は生きている。過去久遠の流れの中の、その過程の一つ一つは相・性・体・力・作･因・縁・果・報のすべてをふくみ、そのまま独立的存在として非連続的に連続しながら現在を形成する中に生きている。 釈尊八十年の生涯における修行・成道・説法の一駒一駒も、法華経寿量品所説時の久遠の本仏釈尊も、その教法と共に、そのまま現在に生き、永遠の未来に生きている。 |
| 後記にかえて 《修行の完結》 「修行は何時完結するのか」 と人々が論じあっていました。大抵の人は「仏陀となった時」と主張しました。 その中で「唱題の当所に既に完結されている」という者がいました。 皆が反駁しました。 「それじゃ、もう修行する必要はないじゃないか」その人はカラカラと笑いながら答えました。 「何時かはという修行は、何時になっても完結しないし、また、もうしないでいいというような修行は実は完結されたものではない。真実の修行はその当所すでに完結しており、完結されたまま仏陀となった後までも、時々念々に相続されるものなのだ。」 ー白象独白ー |