02、真理と人格
03、光と力
04、僧道の復興
05、山頂に叫ぶ
06、魚の子は多けれど
07、泥の中の花
08、平和の道
09、せめてもの
10、ふと聞いた落語
11、目に見えない世界
12、樹下の戦い
13、宇宙を制する大音響
14、目に見えないもの
15、人間賛歌『願生の人』
16、唯我一人の悲願に生きる人々
17、組織の中に道心なし
18、末法の修行は人間礼拝
19、鷲峰会の目的とその使命
20、本仏の浄土は厳然としている
21、正法の宣布か寺門の興隆か
22、正法を見る者は仏陀を見る
23、神々をも指導する人々
24、菩薩道の実践なくして
25、成仏に対する絶対的条件
26、ほんものとうつしもの
27、一国一宇本化僧堂の建設
28、ここに道あり
29、実践者と代弁者
30、奇蹟に対する仏教徒の態度
31、平凡なる殉教者地にあふれるならば
32、過去は生きている
クリシナン・インド大統領は、ネール首相没後における再建インドの指導者として、卓抜なる政治家であると共に、インド哲学の権威者でもあり同時に世界的な音響学者でもありました。
彼は青年時代、ロンドンのケンブリッジ大学に学び、卒業後、久しく同大学で音響学の教鞭をとっていました。この間、渡英に際しては、わざわざ英国からインドまでお迎えの飛行機が来ていたほどであったということです。この一例をもってしても彼の音響学に対する権威のほどがうかがわれましょう。
それは今年の1月のことでした。
日は東より出でて西に入る日本の仏法の月氏(インド)へ還るべき瑞相なり
という日蓮大聖人の予言を体して、身延山奥之院より中天竺王舎城復興のため渡印、撃鼓宣令する日本山一門の姿を、まのあたりにしたクリシナン大統領は、感動のあまり、次のように讃えました。
「南無妙法蓮華経と唱える音声、うちならす法鼓の響き、これこそ宇宙を制する大音響である。」と。
これは音響学上よりみた彼の絶賛であることは申すまでもありません。然しこれが、ただ単なる外交辞令の如きものでないことは、この時、「私は世界中のあらゆる音響を研究して来た。日本人の万歳という歓呼の声も調べてみた。然しこの音響は流れてしまっている。」と忌憚なく批評していたことによっても明らかでありましょう。
インド独立の父と仰がれたマハトマ・ガンディーが、終生お題目を唱え、法鼓をうちならしたその初めは、昭和八年のことでした。この時、ガンディー翁にお題目を授与したのは藤井日達上人でした。時に上人四十八才、二人の間には言葉が通じませんでした
。然し偉大なるガンディー翁の魂は、ためらわず的確にお題目の心をとらえました。そして申しました。「このお題目、この法鼓、そしてこの祈りこそ、インド国内のみならず世界全体のすべての対立相剋を解決するものである。」と。
この讃嘆がお世辞でなかったことは、ガンディー翁みずからお題目を生涯唱えつづけたという事実と、その滅後、ガンディー翁の令息みずから、「父は本当にお題目を信じていました。」と述懐していたことによって明らかでありましょう。
それは本仏釈尊久遠の魂であり、げに宇宙を制する大音響。人間のすべての差別対立を融和合一せしめる平和の音響です。音響学者クリシナン大統領の、この一言こそ誠に傾聴にあたいするものがありましょう。
〈三巻二月号〉