『守護国家論』を読む
訓読（ルビ付き） 　 訓読現代語対訳 　 PDF版はブラウザによって文字化けするのでファイルをダウンロードしてからAdobe Acrobat Readerで開いてください。
	著述の動機と題号
		現代語訳 五十年ほど昔、邪な智恵にたけた上人があって、末代の愚人のためにといって、一切の他宗の宗義を破って選択本願念仏集という一巻の書物を作った。（略）無間地獄に堕ちる誤った見解である。（略） 私はこのことを歎かわしく思って、選択集がなぜ謗法であるかの理由を明らかにするため一巻の書物を作り、守護国家論と名づけたのである。
	『守護国家論』述作の動機と自ら名づけた題号が書かれています。 題号は当然伝教大師の『守護国界章』を意識されたのでしょう。『国界」の「界」は この世の一切の生あるものを住まわせている山河、大地などをいい、言わば国土世間の意。 日蓮聖人は敢えて国土を含む統治機構としての「国家」を用いています。そして翌年の『立正安国論』へと幕府の政権中枢者への上奏と昇華結実したのではないでしょうか。 『守護国家論』の緻密な論理展開の問答体から『立正安國論』の主人と客との「安国」の共通テーマのもと「災難の由来」「仏法の邪正」をめぐって緊迫した問答体になっています。
	論述の基本姿勢
		現代語訳  今は私見を述べることなく、もっぱら経典や論書によって仏法の正邪を明らかにする。 信じるか謗るかすべては仏説に任せて、決して私見を加えることはしない。
	日蓮聖人は浄土門の人師のように時代にそぐわないとか自己を含めて今の人々にはとても出来ない修行だとか勝手に小賢しい考えで決めるのではなく、あくまでもお釈迦さまが説かれた経文を明鏡とし、特に明鏡中の神鏡たる法華経に依らなければならないと終生主張されました。
	究極の目的に向かって
		現代語訳 どうか願わくは、一切の出家・在家の人びとは、一時の世の営みをやめて、未来永劫のために善根の苗を植えるがよい。
	家族のために一生懸命働き、老後に備えていろいろ方策を考えることも大事なことではあるがそれはそれとして一時置いといて、真剣に自己の成仏や子孫や国家の未来永遠の繁栄存続の為に最も善い善根を考えてみませんか。
	『守護国家論』は宗学上の位置づけとして佐渡在島中の『開目抄』や『観心本尊抄』を頂点とし、そこへ至るプロセスの著述とされています。確かに真言宗や浄土門の先師への言及も不徹底かもしれません。法然上人の邪義を破折する論理の糸を辿っていくのも困難です。しかし解らないところは解らないままに聖人の正法衰退への哀惜・邪法対治の仏弟子としての使命感や憂国の熱情の珠玉の名句を味わいながら繰り返し読んでいただきたい。 縦書きでルビを付けて読みやすくするには今のところPDF版しか思い当たりません。しおりは三層までは科段ですが、四層からは小生が付箋代わり付けたものです。制限はかけていませんので削除するなりご自分で付けるなり自由にカスタマイズして下さい。
	それではご精進を祈ります。