ーお尋ねー

私の長男が結核になりました。

医者は「スグ入院する様に・・・」
と申しますので、あわてゝ準備をしていました所、近所の人が来て
「入院してしまっては取り返しがつかない事がある。若し手術して萬一の事になったらどうしますか。今の医者は何でもかんでも直ぐ手術したがりますからネ。それより、トモカクも入院する前に一往神様にオ伺イを立てたらどうですか。非常によく当る行者さんを紹介しますよ」

　と再三すゝめますので、ツイその気になって、行者さんを訪ねました。スルト行者さんから
　「この病気は仏のサワリだから、入院させても、お金がかゝるばかりでよくならない。手術して刃物でも使うと、命にかゝわる。だから早く先祖の総供養をしなければならない」と申されました。

　私の家は代々の日蓮宗で、毎月オ寺サンは回向に来ていますし、年回の法事も欠かした事もないのに……とは思いましたが、先祖も多いので供養の届かない佛様もあるかと思い、主人とも相談して、行者さんのサシズ通り、隣近所の人々にも集ってもらって、大尽ぶるまいの様な法要供養を致しました。

　その後、その行者さんは毎日のように祈祷に来ていますが、時々「今度はアノ佛がさわっている」とか、「コノ佛がさわっている」とかいって、その度毎に総供養をして今迄カレコレ十万近いお金を使っています。勿論、貯金も降しました。

　然し、病気は一向によくなりませんし、長男は、行者を嫌って「ダマサレテいるんだ」と申します。その中、行者さんが「サア大変だ。佛のサワリはとれてしまったが、いよいよ神のサワリがあると分った。イナリと荒神がサワっている。これを祭り込まなければ、長男の命は保証されないと申します。

　かねて、長男の病気はよくならないし、お金はかゝるし、行者さんを疑って、こっそりアチラコチラ尋ねてみましたが、予言はよく当っており祈祷で病気をよくなおしてもらった人も多いし、世間の評判もよくて、いよいよ自分の家にその神様を祭り込むとなれば、半信半疑で、事は重大であり、すっかり迷っています。どうしたらよいでしよう。

ーお答えー

　結論から申し上げましょう。・・・アナタの家庭は、まずその行者から離れることです。そして行者に惑わされた原因を反省して、正しい法華経の信仰に入ると共に、即刻もう一度息子さんの病状を医者に診てもらって、医者の指図に従うことです。入院させなければならないのでしたら、一日も早く入院させるべきでしよう。

　その行者は真実の法華経の信仰によっている者ではありません。ナルホドその行者には或る程度の通力はあるでしよう。そして予言したり、病気をよくなおしたりはするでしよう。然し、それは魔通力であって神通力ではありません。通力は善にも通ずれば、悪にも通ずるものです。通ずるからといって、それが凡て正しいとは申されません。迷信にせよ、邪教にせよ、行者の行力念力によっては、或る程度の奇蹟は現わされるものです。然しそれに引っかゝると、その信仰自体が誤っているものですから、必然的に大きな禍いが起って来るのも当然でしょう。

　アナタの家庭は、今そういう目先の利益を追った悪縁にタブラカされて、奈落の底に落ちていっているようなものです。
　さりとて、行者ばかりが悪いのではありません。アナタにも青任の半分はあります。そういう悪魔に引っかゝる様なものをアナタ自身が持っていたからです。ツマリ真実の法華経信仰をシッカリと持っていなかった為に、悪魔の力にタブラカされたのです。悪魔は常に人が弱った時をねらって好餌をもって慈悲深いフリをしながら言いよって来るものです。

　然し、シッカリした信仰をしていれば、その悪魔のイザナイも、観破出来るハズです。また（法華経）ダラニ品では鬼子母神、十羅刹女は本佛に向って、「若し、行者を伺う悪魔がいても、その伺う便りをなからしめん」と、行者擁護を誓っているのですから、悪魔に乗ぜられるスキもなくなるハズです。

　法華経の信仰は、私達がお題目によって久遠の本佛釈尊の、毎自悲頭のフトコロの間に飛び込んで、一体不二となることであって、その一体不二の当所に、十方分身の諸佛の来集があり、多宝如来の「ゼンザイゼンザイ・・・」という証明もあり、諸天善神の擁護もあって、大マンダラ界が実現されるのです。

　そして「その時の私達こそ地涌の菩薩である」と、法華経にも御遺文にも証明されているのです。従って、本佛釈尊と私達がお題目によって直結する事が、法華の血脈であって、十方分身の諸佛も、行者擁護の諸天善神も、信仰上では傍系ともいうことが出来ましょう。

　これが、佛と神と人間との関係なのです。アナタが本化と直結する信仰をないがしろにして、先祖のサワリだとか、イナリや龍神のサワリだ等と言われてアワテている有様は、将に主従顛倒した姿に外なりません。寧ろ、正しい信仰していればそういう神々こそ叱佗すべきでしよう。

　法華の利益は災いを転じて福となすことです。その行者によって随分大きな損害もされたでしようが、それを怨まず、そのお陰で正しい信仰の在り方を知らしめられたと感謝して、正しい信仰を一層にお励み下さい。先祖の成佛も善神の守護も経文のままに顕現されるでしょう。